プロローグ: sid 天桜史遠
 文中の聯華は聯華(れんか)と読みます。あしからず




「……許さない。
裏切るなんて、絶対に……蜘蛛の糸はどこにでも張り巡らされているって事思いしらせてやる…」
暗い室内に、パソコンに向かって一人つぶやく人影。

その人物以外の気配はない。
静寂、暗闇―憎悪、孤独。

蜘蛛の糸は、一度捕らえたものを放すことはない…。




天 鏡 楼


―警察庁公安部

特殊犯罪取締課…通称オカルト課。
『陰陽』『密教』『呪詛』……
様々な霊術を悪用した犯罪を取り締るために設置された、一般には知られていてない特殊な課である。

……その特犯取締課に似合わしくない少女が一人。


 漆黒の長い髪と瞳、適度に焼けた肌。そして、セーラー服…。
その少女は、報告書に目を落としながら近くにいた男に声をかけた。
「五十嵐さん、例の件どうなってますか?」
「あ、天桜さん。すみません・・・まだ・・・・・」
「・・・じゃあ、こっちに回してください。」
「・・・スミマセン」
今度奢りますから、と言い五十嵐は少女に書類を手渡した。
少女―天桜史遠は、16歳にして警部補の地位にいる。いわゆるエリートだ。
史遠は渡された書類に目を通し始めた。
書類には、蜘蛛の教団について、とだけインクでかかれていた。
その後の文章は白紙―といっても多少なりとも霊視ができれば読めるようになっていた。
『蜘蛛の教団について』と書かれていなければ間違って捨ててしまうに違いない。

「天桜〜・・・」
と史遠を呼ぶ低い声が背後から聞こえた。
「・・・何でしょうか。真神警部」
「朝から悪いが、仕事だ。・・・・・そうあからさまに嫌そうな顔をするな」
「嫌そうなんじゃありません、嫌なんです」
と、キッパリ返すと警部は返す言葉もないな、と苦笑した。
しばしの沈黙の後、あきらめたのか史遠がそれを破った。
「・・・それで、場所はどこなんですか?」
「聯華学園だ。」
「聯華って、高校ですよね。まさかとは思いますけど、こっくりさん関連ですか……」
「ほぉ。さえているじゃないか」
「こっくりさん関連なら低級霊じゃないですか、他に回してください。こっちも調べなきゃならないんです。」
と手に持った書類を警視の前に差し出した。
「ふむ・・・蜘蛛か・・・。まあ、これは後でいい。」
史遠の持っていた書類を取り上げ、デスクにしまった。
「真神警部。返していただけませんか。それ、私の仕事です」
「天桜、これは命令だ。こっちを優先させてくれ。それに、どうやら蜘蛛関連らしくてな。おまけにレベルAときた。
レベルAをこなせるヤツがで、今署に居るのはお前と五十嵐の二人だ。
ついで、言うならば・・・エクソシストでは呪詛は祓えんだろう。」
真神は新しい書類の束を史遠へ差し出し、何かわからないことがあれば聞いてくれとだけ言って給湯室へと消えた。
「丸め込まれちゃいました?」
「・・・・・・五十嵐さん。車出してもらえますか」
「了解です。」
五十嵐は自分のデスクから十字架のネックレスと車のキーを取った。
「調査書持ちました?」
「あたりまえです」
そして、二人はその場を後にした。

だが、史遠は気がつかなかった。
クリップに留められたメモが、落ちてしまったことに。
二人が向かう場所―聯華。

残されたメモには
『レベルA 時にレベルS 
 式を操る少女が居る模様。注意されたし。』とあった。

――――「出会いは、必然」

それは、誰の言葉だったか・・・・。





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